コミュニティナースとは?
コミュニティナースとは、地域をフィールドに住民達とコミュニケーションを取る中で、専門性や知識を活かして健康的なまちづくりをする医療人材です。
看護師自身が制度にとらわれることなく、住民が病院以外の場所、生活の中で出会う看護師です。
島根県出雲市の矢田明子さんが、父親の死をきっかけに、住民が受診や健診などに限らず、スーパーや駅など普段の生活の中で看護師に出会えれば、自分の健康についてもっと考える機会となりアクションを起こすことができるのではないかと考えました。
医療専門職のスキルは、病気や障害が生じた場面で発揮する前提となっていますが、制度の枠を超えてそのスキルを活用すればもっと人の健康維持や介護予防に貢献できるのではないかと言う考え方であり、潜在看護師の新しい働き方としても可能性があります。
どんな人をコミュニティナースというのか?
コミュニティナースは、職業や資格ではなく、地域の住民の暮らしの身近なところで看護の専門性を活かした活動をしていく人たちのことです。保健師のような保健指導をするわけではない…
「ナース」という呼び名になっていますが、ドクター、セラピストなど看護師以外の医療専門職もいますし、最近では、専門的な資格の有無に限らず、住民の元気で安心して楽しく暮らして行けるような活動を行う方、全般を示すようになって来ています。
地域に出て、制度外で自由に人々の健康生活のために活動したいという意思のある人達と、町の中での存在の仕方、どんな風に町の人達と関係性を気付いて行き、健康相談に至るのか、既に地域で実践している先輩の事例などから効果的な方法を共有し自分らしい「コミュニティナース活動」をみつけるための、「コミュニティナースプロジェクト」という人材育成のしくみもあります。
コミュニティナースになった経緯
私は、今、大井田病院に地域医療コーディネーターとして在籍しています。
地域医療を学びたいと大阪から高知に来て10年。地域連携室でのコーディネーターや訪問看護などを経験し、少子高齢化、過疎化の地域で、高齢者を支える地域の専門職のひとりとして、何が可能か日々探しています。
家族やご近所を日常的な支援者としてあてに出来ない現状。病院や地域(介護や福祉)の専門職が、出会う住民は、あまりに弱ってしまっている…もう少し、こうなる前に専門職が住民と関わることができないのか。そんな時に、「コミュニティナース」の本に出会い、この先の超高齢社会で何が可能か、一筋の光が差し込みました!
病院長の勧めもあり、コミュニティナースの人材育成プログラム《コミュニティナースプロジェクト第9期》に参加し、14人の仲間とともに学び、私のコミュニティナース活動がはじまりました。
地域の中でどんな活動をするのか?
住民と効果的に出会うための町での存在の仕方は、個人や地域の事情によってさまざまで、例えば、地方のある村では、住民さんに出会うためガソリンスタンドで働いているコミュニティナースがいます。移動に車は必要ですし、村に一つしかないスタンドなのでほとんどの人と出会うことができます。毎日のように顔を会わす中で、顔色や体重の変化に気づき、早めの受診につなげられているようです。
また、都会モデルとしては、シェアオフィスのコンシェルジェとして存在し、働き盛りの人達と毎日顔を合わせ挨拶をして顔なじみとなる中で、受診してまではなかなかできない相談などに対応しておられるコミュニティナースもいます。
まちの中の産直市や喫茶店などで、店員さんとして存在している方もいるようです。
その他にも、訪問看護として働きながら、一部の時間をコミュニティナースとしての活動にあて、がんサバイバーの方たちの写真展を開催したり、 地域おこし協力隊として、地域活動に参加しながら住民と出会ったり、生活支援コーディネーターとして、地域に出て行き、住民と接し、地域課題や個別課題の解決につなげるなど、行政機関に所属しながらコミュニティナースとしての活動をしている人もいます。
地域で実際にしている活動
現在は、週に2,3回、病院から地域へ出ています。宿毛市を走るはなちゃんバスに乗車し出会った住民さんとお話したり、市の事業である配食サービスの車に同乗し生活の様子をうかがったり、地区の100歳体操やミニデイに参加し、一緒に体操やおしゃべりをしながら、血圧や脈拍を測ったり健康相談行ったりしています。
この活動を発端に、制度にとらわれず、病院で出会うもっと前に専門職が住民と関わることができれば、もっと人の健康維持や介護予防に貢献できるのではないか、そんな期待をもって、11月21日、宿毛市と宿毛市社会福祉協議会、宿毛市医師会で「医療人材を活用し地域住民の健康維持や地域包括ケアシステムを推進する」ための3者協定が締結されました。
はなちゃんバスや配食の車で、市街地や10~20Km離れた中山間を走りながら、住民さんの通院や買い物の様子など普段の生活を見聞きすることが出来ます。そして、日々、「知恵」を使い、協力し合い、また楽しみをみつけながら、懸命に生きる住民の逞しい姿に出会います。
まだまだ住民さんから教えられるばかり。
関係性を築きながら、住民の健康生活に寄与できる存在となる活動を目指します。