秋晴れ、低くなってきた日差しに目を細めて車がギリギリ通る道を行く。
運転するのは配食サービスのスタッフで、私は助手席で5回目のお試し同乗。
地域にどんな人が住み、どんな生活をしているのか、何を楽しみ何を諦めているのか…
そんな「つぶやき拾い」をしたいと、先月から配食サービスに同乗させてもらえるようになった。
「こんにちは。お弁当お持ちしました」いつもの窓は閉まっている。出てこない…
今度は、玄関の扉の方の窓へ移動…「あ、いた」
「お弁当持ってきました」毎日の配達なんだけど、「はい、どうも」といかない。姿が消えたかと思ったら、隣の出入り口から登場。目も耳も相当悪くなってきているということだったけど、にこにこしながら外へ出てきた。
窓から中に入れた弁当をまた取り出して、ご本人の手に載せる。重みを感じていただく。
「お弁当、今日の分、食べてくださいね」見かけの同じ空の弁当と交換なので、新しいのを持ってきましたアピールのつもりだったが、
「ああ、弁当ね。誰かいっしょには食べてくれんのかね?」
ん?
「ひとりで食べてもね、おいしない。食べんから大(便)も出ん。いつ出たかもわからんようなってしもうとる」
「窓開けて、食べるけどね、なーんも起こらん。毎日いっしょ。」
「昔は、ウサギが来よった。なあーんも会話せんでもええ。じーっとこっち見よる。害がない思うたら、ここでぴょんぴょんぴょんぴょん跳ねてから帰りよる。かいらしい。もううーちゃんも来んなったなあ」
こんなにお話しされる方だったんだ。
改めて庭に目をやる。使ってなさげに施錠された別棟の建物の前の小さな空き地、低くなった日差しが黄色く照らしている。
折り畳みのテーブルと椅子を置いて、2,3人で野外カフェ…そんな風景が目の前に広がった。
「また、明日お弁当持ってきます‼」
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寒くなるまでにいっしょにごはんを食べよう。
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