古いけど、「白衣の天使」というのを私は幻想と思っていなかった。私の母親は、看護師で、母親の働いている時の優しい笑顔に、強い憧れを持って看護師になった。
人を笑顔にできる仕事として、旅館のおかみさんになろうかと考えた時期もあった（ナイショ💧）が、お客さんが目の前で倒れたら、私は、あたふたしてしまう。ほんとに困った時に支えになりたい、そう思い直して、やっぱり看護師しかないと、人も自分も幸せになれる仕事として看護師を選んだ。
大学病院に就職した。憧れのナースになりはじめて自分が受け持ちになった患者さん。しかし、治療はきびしく、むしろ治療で衰弱していくようにさえ見えた。
はじまってしまった治療に、やめてもいいよ、とは言えなくて、当時の看護師長に「こんな治療なら受けなかったらよかったと言われた。私はなんて答えたらいいかわからなくて…」と相談した。「あなたの感じるそのまま伝えてみたら？」という答えに半信半疑…
当時AランクだかSランクだかと言われたクリーンルームと呼ばれる部屋での療養は、部屋を汚染しないため、患者はひとりで生活しなければならなかった。
誰の援助も受けることなく、致死量と言われた抗がん剤投与と放射線治療でボロボロになった体をたたき起こして、一日5回の感染予防のうがいをしなければならなかった。食事も食べれない、水も飲めない、だから高カロリーの点滴で24時間栄養補給をされながらでも、感染症から自己を守るための行動を自身でしなければならない。
代わりにやってあげることができない。
苦しい患者を目の前に、何もできない自分…
洗面台にもたれかかり、独特のにおいと味のするうがい液を少し口に含んだだけで反射的に吐き出す。えずきながら、３０分は裕にかけて 、うがいを完了する。私は、クリーンルームの前に距離感をはかれないまま突っ立っていた。知らんぷりも出来ないけど、見ていていい光景なのかもわからない。気になるから、身体がそっちに向く。
患者さんから出た「こんな治療…受けなかったらよかった」の言葉
「わたしが代わりにうがいができたら…」そう感じながら
せっかくつらい治療を乗り越えてきたのに。治ると信じて諦めないで…
「そう言われたらなんて言っていいかわかりません…」そんなように答えた気がする。涙声になった自分にびっくりして話すのをやめた。
もう看護師でも何でもないな、って思った。
元気になってからこの患者さんに言われた言葉、「ほんま、詐欺やと思ったで。副作用やら合併症やら…あとからあとから小出しにしやがってって。でも、最初から全部聞いてたら、こんな治療受けんかったやろな」
いつの間にか、急性期病棟でのわたしの「ナースのお仕事」は、点滴や様々な医療デバイス（機器）の管理と並行して、患者の思いを傾聴し医師に伝える、医師の考えを一生懸命患者に伝える…患者が安心して医療に参加できるように、そのために患者や医師との信頼関係を築くことがメインになっていた。
今、病院から地域に出て行くコミュニティナース
目の前の苦しんでる人を、クリーンルームの透明カーテン越しに見ていることしかできなかった過去の自分…
困ってる人に、自分から駆け寄って行って、その手を取って、その声を聴くことが出来る。
「大丈夫。いっしょにやりましょう」と、今度こそ、一緒に挑戦することが出来る。
そして、医療が必要な状況になっても、医療が患者の人生を乗っ取ったりしない。医療者として彼ら彼女らが自分の人生を生ききることを応援したい。
そう、わたしは、医療と患者のニーズをつなぐ人になろう。
わかりにくい言葉があれば何度でも説明する
症状が良くならなければ、なにかできることがないかいっしょに考える
主治医や、理学作業などの療法士、薬剤師、栄養士など相談できるスペシャリストがたくさんいるから知恵を借りるよ
多くの医療者は、「患者の治療を遂行することで、患者の人生に貢献している」という自負があるのではないか。
医療者の一方的な思い込みやおごりではなくて、専門家としての時間とお金をかけた学びや経験を活かして人々の健康に貢献する
医療者のそのチカラは、貴重な社会資源として、もっともっと社会に貢献できるものになる‼ そんなコミュニティナース的な医療職のあり方が浸透し広がっていってほしい。
高齢者の人生とおなじように、
医療職の人生も、もっともっと輝けると思うから✨✨
「それぞれの体験が必ず誰かの役に立つ 必ず、自分の出会うべき人がいる」
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